建売を下に見る傾向があるけど・・・

建売と注文とは

新築戸建て住宅は大きく分けて2つに分かれる。建売と注文だ。

  • 建売:建設会社が建てたものを、我々居住者が購入するもの。
  • 注文:居住者が建設会社に建築を依頼して作ってもらうものである。

どっちも家に違いは無いのだが、建売の方は”もしも売れなかったら”建設会社の大損になってしまうから、確実に売れる値段設定になる。
結果として、ローコスト寄りの住宅が多くなる傾向にある。
実際はハイスペック・高価路線の建売もあるし、注文住宅でも必ずしも豪華仕様ではないので、注文か建売かでローコストかどうかを断定はできない。ただ、全体的にそういう傾向がある。

また、建売は売り手が確定する前に作る都合上、あまり尖った間取りや構造にはできない。万人受けするような作りになっている。
一方で注文住宅は個人の好みと予算に応じて自由に作れるので、凝った作りであったり、便利なつくりにしたりする傾向がある。

そんなわけで、注文住宅を買えないからと言って、建売を買うのはクレバーではない/貧乏くさいという風潮があるにはあった。
というか、私も真剣に家探しをするまでは、建売を買うくらいならマンションの方が賢いのでは・・・?と思っていた。

ただ、昨今の情勢を見ると一番賢いのは建売なんじゃなかろうか・・・という気がしてきた。

リスクを忘れてる

自宅もある意味投資である

ここで、実は私は以前不動産投資をしていた。家には自己居住用と収益用という分け方がある。
持ち主が済むのか、人に貸してお金を得るための建物なのか。ということである。

不動産投資と言うのは危険である。
以前はワンルームマンションを買わないかと投資話を持ち掛ける電話が流行っていて、うまいこと話に乗って2000~3000万円くらいのマンションを買ったが、目論見通りにいかず損を出してしまうという話がものすごく多かった。
その損の額たるや、数百万円単位になる。

勉強不足で手を出すと重傷を負う危険なものが不動産投資なのである。
まぁ、私は勉強が十分だったのか運が良かったのか、数百万円の利益を出して撤退できたが・・・。

ここでじゃあ自分で住む家を買うって投資は、不動産投資に比べたら安全だね!となるかというと、これもある意味不動産投資だよなと思う。
投資用物件を買って、自分で家賃を払って住むのと大きく変わらない。

自分が住むわけだから、不動産投資に比べたらいろんなリスクは下がる。例えば空室リスク(誰も借りてくれない!)や、室内を滅茶苦茶にされてしまうリスク、家賃を滞納されるリスクもない。

ただ一方で、災害でぶっ壊れるリスクとか、古くなったら修繕をしないといけないリスクとか、やっぱりリスクは残る。まぁ、これらはまだ致命的では無い。

もっとも致命的なのは、「代金を払ったけど家が手に入らないリスク」だろう。数千万円単位で損が出るから、不動産投資の失敗の比ではない。

お金を払ったのに受け取れない?

ビジネスをしていないと、「代金を払ったのに対価を受け取れない」「返金されない」というケースにぶちあたらないから、想像できないと思うけど・・・世の中にはお金を払ったけど対価が受け取れないというケースが一定数存在する。
相手が逃げちゃったり、破産したりした場合だ。

そんな馬鹿な!と、思うかもしれない。どうも勘違いしている人が多いと感じるが、「自らに落ち度が無ければ、不利益を被ることはない。」というのは誤りである。発展して、「自らに落ち度がないのに受けた不利益は、だれか(公共?)が補填してくれる。」と考えているっぽい人がいるが、それも誤りだ。

原則として世の中は理不尽かつ不公平で、酷いものだ・・・それを皆でうまくカバーしたのが政府や経済、法律。あんまりカバーが立派になったので、ここが地面と勘違いしている子がいるが、一歩突き抜ければ理不尽の海に落ちる。

だから、代金を先に支払う場合は、契約通りのものが受け取れないリスクが一定数あることを考えておかなくてはならない。したがってなんでも基本的には金と物は同時交換である。

ところが、慣習的に前払いになる取引がいくつかある。自動車関係と家関係である。

この二つは注文から引き渡しまでに時間が掛かるのと、履行するのに先に買わないといけない物が多すぎるので、後払いが難しい。
結果として、先払いになることが多い。

(でも、僕はプラントの建設なんかも請け負う会社に勤務しているけど、プラントなんかだと請け負った会社が借金して建設して、お客さんからは後払いとかもある。だから、本当は建設会社が短期ローンで家を建てて、受領と同時に建て主のローンを執行ってのも、原理的にはできないことは無いんだよね。でも、億単位の金を融通できないと仕事が受けられないってのが参入障壁になって、割高で仕事を取れているのかもしれないなぁ。)

契約をしてお金を払っても、相手が倒産してしまうと物が引き渡されないばかりか、お金も返ってこない。

なかなかに危険な取引なのである。

倒産事例

あくまで可能性の話を語っているのではない。事例にはいとまがない。

2025/09 新潟/ニコハウス倒産

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1974483?display=1

兵庫/SUMUSTIYLE 企広

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900171854.html

2025/10北海道/フェザーホーム
https://news.yahoo.co.jp/articles/3513b42faf730664993482bdc747faf356f561b8

特にインフレ局面にある今は危険だ!
インフレ、つまりモノの値段が上がっていく局面では、こういう先に代金をもらっておいて物を作る仕事はリスクが大きくなる。

もちろん、対策は動き出しているが・・・

一応、こういった場合に備えた公的な保険として「住宅保証機構」がある。
https://www.mamoris.jp/kansei
だが、地震保険のようにどんな家でも入れるのではなく、認定を受けた業者に依頼した場合しか入れない。
つまり、もともと怪しい会社には保険はかけられないのである。

したがって、超大手住宅メーカーのような比較的高いところに頼める人や、大手じゃなくても住宅保証機構の保険が掛けられるような人は、まだいい。

問題は私のような庶民だ。超大手に頼むのはつらいし、保険に入れないような工務店で建てざるを得ないような層の人間は、一か八かの逆宝くじをやらなきゃならん。

このまま住宅建築リスクがひどくなったら、なんらかの公的な保護策が打ち出されると思う。
ただ、少なくとも今のところはないし、いつできるかもわからん。

そう考えると、「できている物を買う」という建売を買うのがクレバーと言えるのではないかと思う。
「家がすべて」の人には申し訳ないが、「家」なんてのは器で、大事なのは「生活」という中身なんだから、器のために中身をフイにするリスクを負うのは賢いとは言えないと思う。もっとも、中身の程度にもよるんだが。

そういえば、現在は戸建てより大人気であるマンションって、ある意味で建売の一種よね。

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