石油給湯器

先日何気なくスレッズを眺めていたら、突然ボイラーが壊れてしまって困ったなぁ・・・というスレッドに出会った。

投稿者: @kazuoogawa1903
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ボイラー??ご家庭に?

興味が湧いて調べてみたら、石油給湯器なるものがあるらしい。
一般家庭用の給湯器って、基本的にガスか電気だと思っていたので意外だった。調べてみると寒冷地では結構メジャーらしい。

自分も仕事で温水とか熱風を作る設備なんかをやる。すると工場では大抵は重油炊きか灯油炊きである。一回、北海道の仕事か何かで、灯油炊きボイラーにしたんだけど、その熱風を産物に直接当てるものだから、灯油のにおいが付くとか何とかでLPガス炊きに改造したことが有った。
だから基本的に灯油のほうが安いんじゃないかな・・・?

給湯器が灯油になったら給油が面倒くさそうだが、「ホームタンク」っていう家庭用の100L/200L入るタンクが売っている。これを設置すれば、石油屋さんが小さいタンクローリーで給油に来てくれるから、そこまで手までもない。はず。

それならストーブなんかも灯油炊きにすればいいし、結構便利なんじゃないかな・・・?と思って、検討してみることにした。

結論から言うと都市ガスが安い

調べたら、「断然エコキュートが安い」「ガスが一番」「灯油が安い!」となんかもう調べ方次第でどれでも一番安くなるので、自分で計算してみることにした。

結果から貼っちゃうとコレ。

結論から言うと、どれでも大した差は無いし、まぁ敢えて言えば都市ガスが安いかな・・・と、思う。という、クソつまらない結論になった。

まぁ、順追って説明させてくれ・・・もしかして間違っているかもしれないので、半分に聞いて欲しいが・・・

計算・・・必要な熱量

まず、お湯を沸かすためのエネルギーを見積もらないといけない。

その為に、最初にどのくらいお湯が要るのか考える。
45℃のお湯換算で計算する。
まず、風呂が1回200L。実際には水で薄めて40℃くらいにするので、お湯は180L。
シャワーが二人で160L。
料理・食洗器・手洗いが30L。一見、30Lでは少なく感じるかもしれないが、風呂シャワーに比べると低い温度のお湯なので、45℃換算だとこんなもんで良かろう。

つまり我が家のお湯の使い方だと、45℃換算で1日390Lくらいあればまぁいいだろう。

390Lのお湯を作るエネルギーを求めたいのだが、ここで1Kcal(1キロカロリー)の定義を思い出してみると、「水1Lの温度を1℃上げる熱量=1Kcal」である。なんだそのよく分からん定義は?と思っていたが、お湯を沸かしたいときは超都合がいい。
390Lの0℃→45℃にするエネルギーは390×45=526,500Kcalである。

ここで、元々の水温が0℃とは限らない。例えば35℃の水から45℃のお湯を作るなら、10℃分のエネルギーしか要らないから、390L×(45-35)=117,000Kcalで十分である。
このように元の水温で大きく変わるので、お湯代は各外気温ごとに検討せねばならない

更に後でエコキュートと比較するために電力量に換算しておこう。KcalとkWhは両方ともエネルギー量なので相互に換算できる。1kWhは約860Kcalなのでカロリーを860で割ればkWhに換算できる。
(1kWはケトルくらいのパワーなので、ケトルで1時間沸かし続けると1Lの水の温度を860℃上昇させることができる・・・やらないが。。。言い換えれば86℃上げるのに1/10時間かかるということだから、14℃から沸かすと沸騰するまで6分。と考えると、多分この計算はあってそうな気がする。)
こうして、外気ごとの1カ月に必要なお湯を沸かすパワーを求める。

水温=気温ではないだろうが(地中を通ってくるので、冬暖かく夏冷たいハズ)、真冬にシャワーを浴びるのと、真夏にシャワーを浴びるのでは、必要なパワーが倍以上違うのである。

エコキュートだったら?

ここでまず、とにかくお得と称されるエコキュートについて思いをはせてみた。

エコキュートというのはヒートポンプ式なので、1kWのエネルギーから1kW以上の熱を取り出すことができる。詳しい原理はググってもらうというかみんなご存じだと思うから割愛するが、大気中の熱を集めることができる装置なので、投入した電力以上の熱量が得られる。

なんかインチキのように聞こえるだろうが、例えるなら「燃料を燃やして直接水を温める」のではなく、「水をタンクローリーに詰めて、燃料を使って暑い地方に移動して、タンクが気温並みになってから帰って来る」というようなイメージだ。

この、消費電力に対して何倍の熱を取り出せるかをCOPという指標で示していて、仮にCOPが2.0であれば、1kWhの電力で、2kWhの熱を取り出すことができる、ということになる。

このCOPは一定ではなく、外気温による。寒い方が熱が集まらないから、効率が悪くなるのだ。
カタログではおおよそCOP=3前後と表記されているが、これは外気温16℃、水温17℃のときの値である。ほかの気温のCOPは機種によってまちまちだが、調べてくれたサイトがいくつかあって、概ね0℃でCOP=1.8くらいまで悪化する。逆に外気温が20℃を超えるとCOP=5.0近くになる。

このように気温によって必要な熱量が変わるが、その熱量を生み出す効率も変化するため、エコキュートの場合は必要なパワーがドラスティックに変化する。我が家の湯量だと外気温0℃なら340kWhも必要になるが、外気温35℃なら僅か27kWhしか使わない。

ここから電気代を計算するが・・・昔は1kWhあたり22円くらいだったのだが、いまは29~40円である。

普通は一杯使うほど単価が減るものだが、電気は珍しく使えば使うほど単価が上がる。
仮に340kWhなら120kWh×¥29.8+180kWh×¥36.4+40kWh×¥40.49=¥11,747となる。この場合平均すると1kWhあたり¥35である。

実際にはお湯を沸かす以外にも電気は使うから、¥36/kWhで計算すると・・・

となる。冬を10℃、夏を25℃と考えると、毎月¥3000くらい変動することになる。まぁ、実際こんなもんだろう。

ガスだったら・・・?

次にガス給湯器のコストについて考えてみよう。

まず、都市ガスのエネルギーを計算すると・・・・
都市ガスの1立方メートル当たりの都市ガスのエネルギーは45MJ。知らなかったんだけど、プロパンガスなら1立方メートルあたり99MJと約2倍の熱量らしい。

まぁ、我が家は都市ガスなのでプロパンの話は置いといて、45MJというのはKcalにすると10,750Kcalである。

燃やしたガスのエネルギーは殆どお湯の温度を上げることに利用されるが、若干はロスとして排気と一緒に捨てられる。機種にもよるのだが、ガスのエネルギーの80%~95%を利用できるらしい。
普通の機種なら概ね90%くらいの効率のようだから、これで計算する。

なので、外気温0℃の時に必要なカロリー526,500Kcalに必要なガスの量は、526,500÷10,750÷0.9=54.42㎥である。

この54.42㎥のガスの代金はいくらかと言うと・・・地域によって結構違うようだが、私の住んでいる地域だと102~121円/㎥である。こっちは電気と違って使うほど安くなる。
基本料金は使う方が高くなるように見えるが、これは計算を簡便にするためのもの。例えば料金Bで考えると、電気のように30㎥までを¥121/㎥で計算して、30㎥を超えた部分を¥107/㎥で計算しなくていいように、30㎥までの部分の差額(¥121/㎥ – ¥107/㎥)×30㎥=¥396を基本料金に足しておいて、30㎥までの部分も含めて×¥107.8で計算できるようにしてあるだけである。

なので、外気温0℃のときは¥1430+¥107.8/㎥×54.42㎥=¥7241になるわけだが・・・でもオール電化にしない前提の場合は最低料金の基本料金は掛かるわけだから、そこはこの計算から除くと¥6,217になる。とまぁ、ガス使用量が多いほど単価は下がるんだけど、面倒だから¥121/㎥で計算した。

お待ちかねの灯油

最後に灯油炊きを計算する。

灯油は1Lあたり8,718Kcal。給湯器の効率もガスに近いので0.9とする。

灯油の配達単価は自分の住んでいる地域だと¥118/L~¥122/Lである。

仮にタンクを設置するなら100Lのタンクからスタートになると思うんで、一回の給油量は50Lくらいになるかなぁ。

という具合になる。

まとめ

整理するとこう

  • 基本的にエコキュートが一番安い
  • ただし、外気温10℃くらいでエコキュート≒ガスになり、それ以下だとガスが一番安い
  • 灯油はガスより2割高い
  • 最も差が付くのは外気温20℃くらいの領域で、エコキュートに比べてガスは¥1,000高い

つ、つまらん!なぜ灯油が安くならんのだ!!

原因は住んでいる地域の都市ガスが安いせいかな・・・エネルギー単価を調べてくれているサイトが有るんだけれど、一般的に灯油のエネルギー単価が最も安い。

ところが、都市ガスの単価は一般的に184円/㎥らしい。121円/㎥で計算している我が家と大幅な乖離がある。このせいで順位が逆転してしまっているのだろう。
この辺は地域差によるものだろうか・・・上の計算だと灯油はガスの2割高い結果になったが、仮に121円/㎥ではなく184円/㎥で計算したらガスが5割増しになるから、灯油のほうが3割安いという結果になるはずだ。

結局ガスにすっかな・・・

計算したらなんだかんだでエコキュートが安いという結果にはなったものの、一番大きい月で千円くらいかぁ・・・千円でも毎月違うなら検討の余地もある(10年で12万円になるし)。
しかし冷え込むと逆転するし、しかもドカンとひっくり返るから微妙なところである。

特に一戸建てにしたらお湯で洗車したいと思っているので、つまるところ寒い季節のほうが多く使うことを考えると、エコキュートの魅力はイマイチかなぁと。ソーラーパネルでも載ってて、電気がタダで手に入るんなら話は別なんだけどね。

という訳で、この辺ではみんな湯沸かし器にガス使っているけど、それはガスが一番安いからなんだなー。そりゃそうか・・・みんなもちゃんと考えて選んでるんだろうなぁ。

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