保険は結構難しい。掛ければかけるほどいいんだけれど、一方で掛けてたらきりがないし、基本的には保険をかけていて”得”をすることはない。
万が一があっても払えるのなら、基本的には保険を掛けないほうが得。
(例えばコインを投げて裏なら10万円の損失が発生する現象に保険を掛けられるなら、保険をかけておけば1/2の確率で10万円もらえて得しそうな気もする。しかしそういう場合の保険料は5万円より高くなるから、何十回も繰り返したら保険を掛けたほうが損が大きくなる。)
とはいえ、確率が低くても致命的な損失が発生しうるようなことには保険を掛けておくべき。そうしないと、常にいつか致命的な損失で人生終了するリスクを心配しなくてはいけなくなる。
そもそも火災時の責任分担って?
今回、初めて家を買うことにしたが・・・致命的なリスクって何だろうか。
まぁ思いつくのは火事・地震・水害だよね・・・
まず火事について考える。
よくある勘違いとして、火事には一般常識と違って「失火責任法」という特例がある。
例えば隣家が火事になって、自宅に燃え移ったとき・・・隣家に損害賠償はできないという決まりである。
例えばここに不幸にも新築で隣家が火事になってしまった方がおられて、「隣家に通常の賠償請求以外に、あれとこれも賠償請求できますか?」などと質問している。
貧しい私と違って、新築で家を買うほどのポジションの人でも、理解していない場合があるのだ。
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もう無茶苦茶なリスクである。自分がしっかり火の管理をしていたとしても、近隣の不始末で火事が発生して延焼して、自宅がダメージを受けても全部自己責任なのだ。
(逆に、万が一自宅が火事になってしまって、隣家に燃え移っても”重大な過失がなければ”、法的には賠償責任はない。)
だから、万が一燃えちゃったときに対して保険は掛けておく必要がある。
火災保険の新価評価額
火災保険に加入する場合は、”新価評価額”という仮に新築ならいくらなのか?という基準になる価格を取り決めることができて、しかもこの価格は保険を掛ける側がある程度調整できる。(なんで保険を掛けたい側の意向で上下するんねん。という気もする。)
これは保険というのは基本的に”実損払い”なので、保険金の額というのは損害が発生した場合の時価になるのが通常である。
例えば3000万円で新築した家は、新築した直後は3000万円の価値があったけれど、耐用年数は35年だから、20年後には価値の約2/3が減っているとみなされて、時価は1000万円になる。
この築10年段階で火災にあって家が全損したら、時価1000万円に対して保険金が下りる。
これで問題ないような気もするが、1000万円を受け取っても再建するのに3000万円要るんだから、すでに利用した分の2000万円は自腹で負担して再建してください…と言われても困るわけだ。
特に私が今回買った家なんて、建物自体は耐用年数を終えているから、帳簿上は1円の価値も無い。燃えてしまっても損失は殆どないでしょ?となってしまったら困るわけだ。
そこで、「万が一全損してしまったら、これぐらいの損失が発生したのと同じこということにしよう」と取り決めをしたのが新価評価額である。
これは100%自由自在に決められるものではなくて、保険会社が新築価格をもとにベースを決めて、そこから±20%程度の範囲で被保険者が調整できる。
今回は保険会社は約3000万円のたてものでしょうと評価してきたので、私は2400~3600万円の範囲で保険を掛けることができるわけだ。
地震保険
ちなみに、地震で起きた損害や、地震で発生した火災での損害は火災保険では補填されない。
火災保険に+αで地震保険をセットしないといけない。
そして勘違いが多いが・・・地震保険を掛けても半分しか保険金が下りないのだ。
例えば3000万円で新築した家が地震で倒壊して全損した場合、降りる保険金は1500万円になる。地震は保険で完全にカバーすることができない災害なのだ。
ちょっと脱線するが、賃貸持ち家論争で、賃貸の家賃は「持ち家としても発生する費用+大家の利益」なので賃貸の方が損だという勘違いの根底はここにある。
不動産を所有した時点でどうやっても回避不能なリスクがあって、大家さんがそれを負っているのが地震リスクである。
まぁ、昨今は地震に対する理解も進んでいるから、築浅なら大丈夫だと思うが・・・
でも、能登半島沖の実例ではいわゆる現行基準と呼ばれている2004年以降の建物も、20%近く全壊しているので、結構運次第というか、建物自体の個体差によるところが大きそう。
私が買った家は新耐震基準に分類される家で、耐震性についての縛りが緩かった時代の家である。
基本的には現行基準と大きく変わらないのだが、細かいところの固定方法に詳しく決められていなかったというもので、大工さんの腕と気合次第で現行基準並みの建物もあるだろうし、全然現行基準に届かないような建物もある。そういう時代である。
当然そういうことも考慮して、私は今の家を買ううえで県の「地震の揺れやすさ・液状化しやすさ」マップで、そもそも揺れにくい地質であり、歴史的成り立ちからしても堅牢であろう…と言う場所を選んだ。それに1Fは鉄骨躯体が見えているし、外注した際の構造図があるので計算して、まぁ宮城県沖の震源から十キロくらい離れたところの揺れなら大破しないだろう・・・と計算して買ってはいる。
ただ、仮に震源の直上だと耐えられないので、絶対はない。だから、不幸にも震源近くになったときは取り壊して更地にするくらいの費用は保険で賄いたい・・・というわけだ。
(ちなみに地震の加振力の実績値は、宮城県沖も能登半島沖も震源からの距離でだいぶ変わる。ここで現行耐震基準のグレード3が想定している加振力は震源からある程度離れたところのものなので、不幸にも直撃したらやっぱり倒壊する可能性はある。絶対はないのだ・・・)
水災免除特約
ちなみに火災保険は水害も補填されるが、これを水害は補填されないという条件にも変更できる。
私は悩んだが水害は保険抜きにした。
水害有り無しだと結構金額が変わってくるというのと・・・あと我が家は内陸の丘陵の上なので、そもそも水災が起こりにくい。
もちろん昨今はゲリラ豪雨などもあるから、用心しないといけないが・・・そういう水災での浸水高はせいぜい100~300mmくらいだろう。
1Fがある家だと床下浸水する恐れはあるのだが、我が家は1Fに床がなくって全部土間である。
水没するのは、自動車、エアコンの室外機、1Fに置いた工具や部品、そんなところだろう。
まず自動車は住宅の保険で降りないので、これは火災保険で考えても仕方ない。
エアコンの室外機はかさ上げして置けばいいだけである。
1Fに置いた工具や部品なんてのはたかが知れている。
だから、うちに限っては要らないかなと。
類焼損害賠償特約
上の方で失火責任法について触れたけど、万が一自宅が火事になっちゃって、周りの家に損害が出ても、“法的には”賠償する責任はない。
無いんだけど、前述のように勘違いしている人もいる。
古い住宅街だから、もう年金で掛けるのしんどいからって保険を掛けていない家もありそうだ。
それに、家はまぁ基本的にみんな火災保険を掛けているだろうが、車に車両保険を掛けていないケースも多そう。
そのあとも住み続けたりすることを考えると、法的に責任がないからと言っても、道義的な責任を追及されそうである。
そう心配する人のために、類焼損害賠償特約と言って、一定範囲で自分の保険会社がまず賠償してくれる特約がある。5年で1万円前後と結構安いのでこれはつけておいたほうがよさそうだ。