Threadsを眺めていると、結構マンションのトラブルが流れてくる。
まぁ、あと片っ端からミュートしてしまったけど、「マンションと戸建てどっちが正解」論争なんかもある。
正解は分からないけれど、ハッキリ言って
「区分マンションを買った人の、マンション管理に関する知見がアホすぎる」
と思う。
この言い方だと不快に思う人も居ると思うし、私より詳しい区分所有者だって一杯いると思う。
でも、事実として区分マンションを買って管理することを全然理解できていない住人が、それなりの数いることは間違いない事実のようだ。
区分マンションの致命的なリスクってのは、こういう住人がもたらすリスクに対して一切対抗しようがないというところにある。だからもうギャンブルの領域だと思って、私は買うのは一戸建てにした。
そもそも区分所有マンションとは
まず、区分所有マンションという言葉自体分かっていないマンション所有者がいる。
「いや!俺のマンションは分譲マンションで、そのちんけな良く分からん区分所有マンションなんてやつじゃない!」みたいな反応をする。
まぁ、そうなんだけど・・・そもそも、分譲マンションの法的立て付けってところからの話になる。
日本では不動産の所有権は「不動産登記法」で守られていて、土地を買えば土地を登記して土地所有者になる。家を買うか建てるかして所有すると、建物登記を行って建物所有者になる。
ここで複数の所有者が居る場合は、「共同登記」と言うのをすることになる。例えば夫婦で家を買う時に、明示的に二人のものだということにしたければ、「夫:1/2持ち分、妻:1/2持ち分」みたいにする。夫婦の場合以外に二世帯の場合とか、あとは相続で按分するときなんかに共同登記はよく利用される。
ここで、マンションを買ったときの登記はどうなっているんだろう?と考えてもらうと、この「共同登記」を利用していると勘違いしている人がいる。
共同登記の場合、土地はまだ良いとして建物であれば「建物のこの部分」みたいな登記はできないから、マンションの実用には適さないし、更に共同登記の場合は自分の所有分を売買するだけの場合でも、他の部分を持っている人全員の合意が必要になる。(その方が良いかもしれないが・・・)
これではマンションは扱いにくいねってことで作られたのが、「区分所有法」というものだ。
従って、法的な用語では分譲マンションというものは存在しなくて、1つのデカイ不動産が存在して、それを「区分所有法」に基づいて所有権を切り売りして売買したものになる。
ただ、そういうやり方で買ったマンションのうち、便宜上自分で住むものを「分譲マンション」と呼び分けている。何と呼び分けているかと言うと、他人に貸す目的で部屋を買った「投資用マンション」とだ。しかし投資用に買うなら一棟丸ごとが本来の形態なので、1部屋だけ買う投資用マンションを投資用区分マンション、区分マンションなどと呼び分けている。
なので、分譲マンションというのは区分所有法に基づいて切り売りされたマンション、つまり区分マンションの一部であり、用途を自己居住用としたものの便宜上の名称である。
区分所有法の何がリスクか
マンションを買ったら「不動産登記法」だけでなく「区分所有法」で権利が保護される。結局、家が買えて守られるんだからいいじゃない!と思うかも知れないけど、私はここがリスクだと思う。
区分所有法の定めていることは、複数人で不動産を円滑に管理するための特例である。
例えば先の共同所有では自分の持ち分を売買する際に、残りの持ち分を持っている全員のハンコが要る。しかし、区分所有法で所有しているマンションなら、自分の持ち分なら自分のハンコだけで売買できるわけだ。
逆に言うと、「訳の分からん奴が同じ建物を買うことを拒む自由が無い」ということである。
これだけだと「一戸建てだって隣地がどうなるか制限する方法が無いから一緒じゃないか」となる。近しいが、そういうことを言っているわけじゃない。
例えば区分所有法では以下の事項を多数決で決めることになっている。
・各戸から徴収する管理費の金額・・・1/2
・管理会社との契約・・・1/2
・修繕工事の契約・・・1/2
・役員の選任・・・1/2
・管理規約の変更・・・3/4
・建替え・・・4/5
後ろの分数は、賛成数である。
上記のことをしようとしたときに、全体の一定数の部屋が同意しないとできないし、逆に言うと自分がやりたくないことでも、全体の一定数の部屋が同意したらやらないといけない。
例えば最近の四谷サンハイツ事件だと、マンション住人の4/5以上が建て替えに賛成したため、建て替えが決定した。このとき、既存住人が原居をいくらで引き渡し、新居をいくらで買うという契約にするかの制限が無いため、原居を二束三文で引き取られ、代わりに4000万円近い新居を買う/買わないの判断を迫られることになった。
これを合法的に防ぐ方法は無い。
(正確には四谷サンハイツ事件だと敷地売却制度を逆手に取られた形になった。敷地売却と言って、マンションの建っている土地を売却することができる。その代金を新しいマンションの購入に充てることによって、建て替えを模すことができるという訳だ。本来敷地売却は全員の承認が必要だが、特例法で耐震性とか外壁のメンテ状況など特定の要件を満たせれば、4/5でOKになる。)
だから・・・例えば良い所にマンションを買ったとして、マンション1棟を買えるような投資会社が目を付けたら
①他の部屋を大資本の投資家に買われる。
②1/2を超えると役員を選任し、管理費修繕積立金をある程度自由に設定できるようになるから、管理費修繕積立金を爆上げする。
③耐えられず退去した部屋を買いたたく
④3/4を買い占めれば管理規約を変更できるから、ペット可を不可にしたり、門限を設定したり、毎週理事会をする決まりにするとか嫌がらせをする
⑤4/5買い占めれば敷地売却ができるから、いろいろ条件付けて安く買い取る
⑥投資会社はマンションゲット
最後まで粘った住人は、二束三文の敷地代金を部屋数で割った銭で追い出される。
みたいなことも可能だ。
これを防ぐ方法は無い。
(つづく)