結婚祝いに両親から買ってもらったヘルシオ。
普通の電子レンジとしても使えるけど、パンの生地を作ったり、野菜を焼いたり、疑似とんかつを作ったりと、結構便利で頻繁に稼働している。
がっ、なぜか最近、加熱しても「温まっていない」という現象が頻発。
ちょっと調べてみた。
結論としてはやっぱり扉が悪い。滑車が削れている。アルミテープを巻いて応急処置して直ったけど、いつまで使えるかは分からない。以下詳細。
さてまず、ヘルシオの調子が悪い・・・という時は調べると最初には「ヘルシオナビ」っていう公式診断サトが出てくる。
ここで症状を入力し順を追っていくと・・・
答え:たぶん壊れてます。
修理代の目安が3万円以下というのは若干魅力的に写ったが、それは普段BMWの修理代を見ているせいで、落ち着いて考えれば10万円もしない機械を5年目で3万円かけて修理というのは高い。
そこで情報収集してみる。
・温まらないことが多い→扉ヒンジ部の故障
・温まらない→温度センサー故障
・温まらない→ドアラッチ故障
・温まらない→ドア修理
・温まらない→ドア手で押すと使える
・温まらない→インバータ故障
・たまに温まらない→不明。扉ラッチ修正
・温まらない→回転アンテナと扉ラッチ故障
・温まらない→廃棄
・時々温まらない→ドアを強く閉めれば使える
・ジャンクヘルシオ時々温まらない→ドアを強く閉めれば使える
このようにざっと調べると、傾向が見えてくる・・・
「ヘルシオが温まらないときはドアが壊れている可能性が高い。」
具体的にドアがどんな感じに壊れるのだろう?ヘルシオ、ヒンジで探してみるといい感じの記事があった。なるほど、よくわからんが、ヒンジとか言う部品は外側に付いているようだから、軽く分解したら調べられそうだ。
というわけでレッツ分解。
分解は簡単で、左右の下に付いているスカートを、ずれ留めのネジ一本ずつ取り外し、スカートを後ろ側にスライドさせて取る。
次に背面に回ってネジを外し、排気をUターンさせている樹脂カバーを取る。
同様に背面側から外側の外板を留めているネジを抜き、カバーをうまいこと後ろに引き抜く。
なんというか、カバーの正面側はハマってるだけなので、ネジを外した状態で後ろに引っ張ると抜けて外れる。このとき、側面下のスカート部分の折り返しが引っ掛かるので、斜め上に抉るように持ち上げないといけない。難しい。
で、ばらして観察すると、問題のラッチが右側にある。
電線が出ている3つの部品が通称リミットスイッチと呼ぶ部品で、色が付いたポッチが押し込まれると導通するスイッチの一種である。色が赤緑黄色と全部違うのがポップで良い。
下が扉を閉めるためのヒンジだろうか。
レンジを普段使う時の方向で見たときに、右上にでっぱりと、その上に四角い窪みがあると思う。
でっぱりが下のアーム、四角い窪みが上のアームに繋がっていて、扉が閉まるとそれぞれ押し込まれる構造になっている。上のアームが押し込まれると、赤ぽっちのスイッチが入り、下のアームが押し込まれると緑ぽっちと橙ぽっちのスイッチが入るようだ。
まぁこうやって扉が閉まっていることを電気的に検知して、扉があいた状態でレンジが動いたりしないようにしている・・・と思う。なんでスイッチが3つもあるのかは、私にもよく分からん。
推測だけど、一番上の赤ポッチのスイッチは、コンピュータが「ちゃんと扉が閉まったから、レンジを動かしていいな」と判断するために付いているんだと思う。たぶん。
理由はスイッチのアームが凹んだ形になっている。下のアームのように出っ張っているタイプのアームだと、アームと扉の間にモノが挟まった時もアームが動いてスイッチがONするので、レンジが動いていいと判断してしまう。そうならない様に、間にモノが挟まったときは動かないアームを別に作ったんだと思う。
中段の緑ポッチのスイッチは・・・たぶん、電源をON/OFFするためのスイッチだと思う。
このスイッチはよく見ると、押して無いときにONで、押したときにOFFするスイッチになっている。なんでわかるかって?よく見るとスイッチの側面に書いてあるのだ。
電子レンジって電源スイッチが無いのよね。扉を開けるとONになるから。
逆にいうと、扉があいたことで電源をONするスイッチがあるはず、ってのがたぶんこれじゃないかなぁ。敢えて別についているのは、他のスイッチは完全に閉まっている状態で作動するように調整させれているから、それと共通にするとちょっとでも開いたら電源が入ってしまう。きっと、振動とかちょっとした衝撃で電源が入ってしまうと不気味だから、ある程度開かないと電源が入らない様に設計してこうなったんじゃないだろうか。
と、なると一番下の橙ポッチのスイッチって何だろうか?
山カンだけど、これが動力電源のインターロックスイッチじゃないかなと思う。
「動力電源のインターロックスイッチ」っていうのは、スイッチが入っていないとモータとかマグネトロンといった動く物に電気を供給しないようにする電気回路のこと。今回の例でいえば、扉が開いていたら動かない様にっていうのはコンピュータで制御するわけだけど、プログラムのバグとか、どっかの回路が故障して意図せずに運転指令が出ちゃう可能性がある。このため、電源の途中に、扉が閉まっていないと繋がらない回路を別に作ることで、前述のような不測の事態が起こってもモノが動かない様にする安全回路を設けることが多く、それを「動力電源のインターロックスイッチ」というわけ。
「動力電源のインターロックスイッチ」は信号だけじゃなく、電源そのものが通るので電線が太くなってしまう。よく見るとこのスイッチの線だけ太いでしょ?だからそうじゃないかなと。
さてここで今回の不具合を考えてみる。
・エラーは出ない
・温めスタートはできる
・たまに温まっていない(正常に完了するけど)
ということは、たぶんコンピュータはちゃんと扉が閉まっていると思って、マグネトロンとかを動かしているつもりなんだけど、実際には動いていない・・・っていう状況が可能性として考えられる。
これをスイッチの構造に当てはめて考えると、赤ポッチのスイッチはONしているけど、橙ポッチのスイッチはうまくONしていない、そんな状況だと成立することが分かる。
理論上はそういう状況は起こりえない。扉がちゃんと閉まると、構造上どうしても2つともレバーが押し込まれて、結果として2つともスイッチが入るからだ。
とはいえ、テスターでスイッチの動きをモニタしながら、注意深く開閉をしているとあることに気づく。
下側の橙のスイッチは、本当に完ぺきに閉まっていないとONしないのだ。ほんの紙一枚分でも扉のしまりが悪いと、橙のスイッチはONしない。
しかも、測り損ねかもしれないけど、b接点側もONしない変な状況になる。
「b接点側もONしない変な状況」というのは、一番下のスイッチをよく見てもらうとわかるが、太い2本のほかにもう一本細い線があると思う。これはスイッチが入っていないときにONする、つまりメインの回路と逆動作をするスイッチで、これをb接点と呼ぶ。(メインのスイッチはa接点)恐らく、コンピュータが、「いま動力が入らない状況」になっていることを検知するための配線なんだと思う。
本当はマイクロスイッチはどっちも入らないという状態にはならない。OMRONのサイトの模式図が分かりやすいんだけど、単純なスイッチじゃなくてバネが入っていて、ある程度押し込むとバーンと作動するので、どっちつかずの位置には本来はならないのだ・・・けどなる場合があるっぽい?
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/29/38/
これらを加味して、うちのヘルシオさんはヒンジの一番下のスイッチがちゃんとONしない、びみょーな押し加減になってしまうことで、トラブルを起こしているんじゃないかと推定した。
んじゃ、スイッチが悪いのかな?ととりあえず0.2mm厚のアルミシートをアームに貼って、わずかにスイッチが押されやすくなるようにした。一方で、スイッチというのはそうそう悪くなることは無いので、周りも良く見てみる。
すると、左下の滑車に問題があることに気づいた。
白い滑車に傷が入っているのと、黒い部分に白い粉が付いているのが分かるだろうか?
最初は埃かと思ったが、左側のヒンジには無い。おそらくこれは滑車が削れていて、その削りカスなのだ。
この滑車は扉の開閉に非常に重要な働きをしているパーツだろう。
ヘルシオを含めて電子レンジってロックみたいなものが無く、ある程度しめていくと最後にバコッと閉まると思う。これはこの部品が寄与している。
扉はシルバーの「く」の字というか、ブーメラン上の部品を介して、ばねで引っ張られている。
このシルバーの部品は扉の開き具合に応じて、滑車にあたる部分を変化させながら移動していく。このとき、滑車にあたる角度が位置によって違って、ブーメラン上になっているおかげで、場所によってばねの力のかかりが違うようになっている。これによって中間部では閉めようとするアシストが利くけど、全開位置では勝手に閉まらない、というような加減を出している。
ここで、最後の閉まる部分はこのシルバーの部品に、滑車がはまり込むような窪みが作ってあって、あの閉めるときの直前の扉が引き込まれるような感覚を出している。ガクンとしまり、開けるときはグッと引くと少し引いたところからパッと軽くなるが、それは滑車がこのアームの窪みにスポッと落ちたり抜けたりすることで生じているのだ。
ヘルシオは扉に関して特別変わった構造ではないから、家電の世界では珍しい機構では無さそうだけれども、私は初めて見た。リンクをうまく応用した面白い構造だ。大変参考になる。
で、よ~く考えると、この滑車が摩耗することにより、直径が僅かに小さくなると、シルバーの部品がはまり込む角度が僅かに斜めになるので、扉は全閉のごくわずかに手前の位置で落ち着くことになる。
つまり、滑車が削れると微妙に扉の閉まりが緩くなる。
なので、我が家のヘルシオさんの不調の原因は
[滑車が摩耗する]→[微妙に戸締りが悪くなる]→[微妙にスイッチが押せてない]→[インタロックが利いてマグネトロンが作動しない]
という流れで起こっていると推定される。
んじゃまぁどうするかっていうと、MADな私はインターロックスイッチをジャンパするか、外にスイッチ引き出して人力操作したら?と思うのだけれども、パナウェーブじゃないが電磁波というのは地味に危ないし、最近我が家でWiFiがたまに調子悪いのもこいつのせいかもしれないので、できれば扉がちゃんと閉まるようにしたい。
というわけで滑車を何とかしたいんだけど・・・ここの部品だけってすぐに手に入らない。
苦肉の策で、滑車の溝にアルミを巻いて滑車の直径をわずかに大きくした。
超大変だった。面倒でもヒンジの部品を外してやるべきだったか・・・。
というか、写真をよく見るとめっちゃ白い粉溜まっているから、相当削れているんだなこりゃ・・・。
この様な怪しい修理をして再設置して使ってみるけど、今のところは問題ない様だ。
しかし、そもそも滑車が削れる原因って何よ?ってところはある。
故障事例が多いことからも、ヘルシオの弱点というか設計ミスじゃないかという気がする。
故障事例では、左右の表記があるものは基本的に右側が故障している。これは偶然じゃないと思うんだよな。
推定だけど右利きの人が多いから、自然にドアを開けるときヘルシオの右側のほうに手を掛けると思うんだよ。それで、右側に偏ったところを引っ張るもんだから、ドアが目に見えないほど僅かに歪んで、シルバーのパーツの窪みが滑車を抜け出すときに、左右同時じゃなくて、右→左って順番で動くんだと思う。閉じるときも左→右ってハマるんだと思う。
設計上は左右同時に負荷が掛かることを想定して設計してあって、耐久試験でもきっと真ん中にロボットアームか何かを付けて開閉テストしてOKと出しているだろうから、負荷が右側だけに偏ることによって右側だけ先に寿命が尽きるのではないだろうか。
というのはまぁあてずっぽうか・・・だけど右側だけ壊れやすいっていうのもまた事実のようで、構造上左右に違いは無さそうだから、開閉するとき真ん中を持つってのはオマジナイとしてアリかもしれない。
後から探したら結構ズバリなサイトがいろいろあって、先に見つけときゃよかったので貼っとく。
特に上のほうは分解にちょっと迷ったところが写真付きで載ってて、これみときゃ10分は作業時間が短かったのに。