区分マンションなんてギャンブルみたいなもんじゃねーかという話の続き。
戸建てだってリスクのある不動産なんだけれど、でもリスクをある程度コントロールできる/事前に評価しやすい不動産でもある。
もちろん、例えば隣地に変な人が引っ越してくるとか、災害がうんぬんかんぬんと言った視点では、マンションと戸建てのリスクは大差ないし、むしろ売却の容易さからするとマンションのほうがリスクは低いともいえる。
しかし決定的な違いがあって、マンションは絶対に「他人と財産を共有する」ことが要求される。
戸建ての場合は私道とかの例外を除けば、財産を誰かと共有する事態にはならない。これがアンコントローラボゥなリスクだと言いたい。
管理会社が責任取ってくれるだって!?
共有する財産とは、共用部、そして管理費・修繕積立金である。
修繕積立金がパーになったり、滅茶苦茶なことに管理費が使われるリスクがある。
「え?でもうちのマンションは管理会社がしっかりしているから、そんなことにはならないよ!」みたいなノー足りんが要るから困る。
管理会社というのは、管理組合の代行で管理をしているに過ぎない。
マンションの資産価値とか、維持管理に関する責任は全く無いのだ。
例えば無茶な修繕計画のせいで、修繕積立金が底をついたとしよう。誰の責任で、誰が不足分を払うのか?
それは管理会社じゃなく、区分所有者の責任で、区分所有者が払わなくてはならない。
マンションデベロッパーはこの辺をうまいこと胡麻化して売ろうとするから酷いものだ・・・。
私も今回買った戸建てを買う直前まで、マンションでかなり悩んでいた。そこで近所にちょうど立った大手デベロッパーの一千戸近いマンションも冷やかしに行ったのだが・・・
「長期修繕計画は見せられないけど、グループ会社の管理会社が管理するから大丈夫!」
「管理費・修繕積立金の値上げは大丈夫!」
「責任を持って管理します!」
・・・と、判を押したような答えばかりだ。
繰り返して言うが、マンションの管理会社とは、1年単位で管理業務を委託されただけの会社で、マンションの資産価値だとか、長期的な品質に関する責任は一切負わない。
すべての責任は管理組合、そして区分所有者にある。
まず、この普遍的な決まりを理解できない住人が一定数いる。
とんでもないことである。
管理組合があほだと・・・
管理会社に長期修繕とかの責任が無いなんて・・・そんな馬鹿なという気持ちは分かる。
毎月毎月決まった額の修繕積立金と管理費さえ払っていれば、ちゃーんと自分の区分所有した部屋の価値が保たれるように、共有部の管理が約束される・・・されなければ、困るだろう!
と、思うかも知れないが、修繕積立金や管理費というのは管理組合が決められる。管理会社に決める権利は当然なく、アドバイス程度である。
不足しても管理組合が値上げを決定しなければ絶対に値上がりしない。
逆にいえば、不足が見えているのに値上げしなければ、将来絶対に不足し、それに対する責任は管理組合が負う。管理組合と言うのは、意見に反対した区分所有者も含めての連帯責任である。
私が以前所有していたマンションではそれはもう酷かった・・・
パイプテクター
まず、必要のないものを付けようとする。例えばオカルトの領域であるNMPパイプテクターを取り付けることで、配管の交換費用を浮かせようだとか、50年保証の屋上防水工事をやろうだとかである。
ご存じない方のために解説しておくと、通常マンションの配管は色々と交換が必要である。給水管・排水管はもちろんだし、意外なところで連結送水管なども交換が必要である。
これらの費用は数百万円単位で掛かる。
ここで、NMPパイプテクターと言う部品を配管に取りつけると、良く分からん効果で配管の劣化を抑えられる。というもの。
効果は科学的に立証されておらず、一種のオカルトであるのだが・・・まぁ、特に害が無いなら良い。しかし、このNMPパイプテクターって100万円とか200万円とかするのである。ただの石なのに。
本当に効果が有れば、配管の交換費用が浮くことによってペイできるというか、寧ろ儲かるのだが・・・まぁ、Wikiを見てもらうとわかる通り、かなり疑問のある装置である。
これを付けようという理事が現れた時、困ってしまった。
そりゃ、隣の家の誰かが、自分ちに何百万円もするけど、効果が良く分からない装置を取り付けるって言ったら…やめときなよとは言うけど、反対はしない。だって私のお金じゃないから。
そのアイテムを付けて、数十年後に効果が不十分で、配管を交換しないといけなくなったけど、お金は使っちゃったから無い!どうしよう!となっても、私の知ったことではないからだ。
ところが、マンションはそうはイカン。
その何百万円というお金の[1/戸数]は自分のお金なのだ。
そして効果が無かった時に埋め合わせをしないといけないのは自分達である。
そりゃうんとは言えんわな!
パイプテクターはまだなんとかなった。私が理事をしていたころには、だいぶオカルトであるというパッシングが溢れてきていたから、客観的に見て怪しいということを何とか説得できた。
それより手ごわいのは、「50年保証の屋上防水」である。
50年保証の屋上防水
マンションというのは鉄筋コンクリートでできているわけだ。意外と知らない人も居るが、鉄筋コンクリートと言うのは防水性のある材料ではない。
というのも、鉄筋コンクリートには微細なヒビが無数にある、極端なことを言えばスポンジのような材質なのだ。だから、水を吸うし、時間を掛ければ反対側にしみ出してくる。
うちのマンションの鉄筋コンクリには日々なんて無いよ!と、いうかも知れないが、ある。そういうものなんだ。コンクリは全く伸びないので、微小な建物の伸び・歪で即ヒビが入る。
しかし、ひびが入っても中に入っている鉄筋が踏ん張るので壊れないだけだ。
なので、屋根部分などは必ず防水層を設けて防水している。この防水層はアスファルトか樹脂のどっちかである。日々強い紫外線にさらされていると、アスファルトでも樹脂でも分解してきて、だんだんもろくなってくる。
だから10年位ごとに上に塗装を塗って延命したり、30年目あたりで一回剥がして全部貼りなおしたりする必要がある。
この費用が結構掛かるのである・・・しかも屋根は屋上だから、会談で登って作業できるだろうと思ったら、エレベータのパラペットであったり、最上階のバルコニーの屋根だったりと、あちこち上がれないところがあって、結局大規模修繕で足場を組んだ時にしかできないところがいろいろある。
だから、意外と悩みの種なのが屋上防水である。
これが相場の3倍くらいだったとしても、50年持ちます!保証します!っていう塗装屋を連れてきた。
そりゃ50年本当に持てば安く上がるけど・・・普通の会社が10年しか持たないのに、なんで50年持つわけ?「高い材料で丁寧にやるから」みたいなことを言うんだけど、そんな技術的ブレークスルーが本当にあるのか怪しい。
そもそも50年保証すると言うが、成り立ってから10年もたっていない会社がなぜ50年後を保証できるのか?倒産したときの保険や保証に対する積み立てはなどはあるのか?と聞くと言葉を濁す。
これ・・・金搔き集めて、不味くなったら倒すタイプのじゃ・・・
とは思って必死に反対したんだけど、話し合いは平行線だ。
A「50年持つって言うけど、根拠は?持たずに会社が倒産したときはどうする?」
B「専門家が50年持つと言っているのだから、それが50年持つ根拠だ。倒産はしない」
と言う塩梅である。
あーこりゃ、ダメだな。少なくとも俺にとってマンションはギャンブルで、買ってるうちに手を引こうと決意した。
全部が全部だめといいたいわけじゃない
まぁそんなこんなで、ずっとマンションを渡り歩いてきたけど、この歳になって方針転換して戸建てを買うことにしたよ。
管理組合の議論も自分よりアホ(だと思う)人が混じっているから、私は一抜けしたわけだ。
逆にさ、あのオカルトに大金つぎ込もうとする人が身内にいたら、戸建ての方がある意味ヤバイ。
マンションは判断ミスが住民数分の1に薄まるから、全部自分が食らうわけじゃない。ある意味分散だな。
それにもしかしたら私には真似できないような凄いテクニックで安く修繕したり、運用できる人が管理組合に参加する可能性もある。どこだったかな・・・武蔵小杉のマンションだったか、修繕積立金を運用することで不足分をカバーするどころか利益が出ているというマンションがあった。
マンションくらい大きい建物だと、そういうスペシャリストが住民にいる可能性だって出るもんな。
ただうまくいけば「何もせずラクチンでうまくいく」か「あほ管理組合と奮闘してしかも赤字」のどっちに振れるかわからないとなると、やっぱりギャンブルだと言わざるを得ないと思うんだよなぁ。
戸建ては自分でやらないといけないことがもう既定路線で決まっているけど、管理組合で奮闘してさらに金が不足する可能性はないからな。
でも一番言いたいのは、マンション居住者はもっと管理組合員の1員だという意識を強く持てってことなんだよなぁ。ラクチンだって言ってるけど、それはちゃんとした理事がお前の負担を負ってるんだぞと。
いやまぁ、もういいわ。