不思議惑星キンザザ

不思議惑星キンザザという映画を見た。

最初狂ってんのかと思ったけど、なかなか味わい深かった。人に薦めたい映画である。

1986年の映画で、いまは無きソビエト映画である。

WikiPediaにもページがあるくらい、有名な映画だったらしい。


内容や絵は結構チープだ。

冒頭、ロシアの普通の街中で、通りすがった建築技師とバイオンリン弾きが、自分は宇宙人だと名乗る浮浪者と話をしていて、話が通じないから時空移動ができると豪語しているボタンを押して話を締めようとしたら・・・本当に移動してしまったというリアリティのかけらもない設定からスタートする。

ただ、そりゃおかしいだろ!と言わせない展開の滑らかさがあって、非現実的だという考えより先に「あーだから押さなきゃいいのに。もうそこ地球じゃないって、現実逃避したってダメだって」という考えが頭をめぐる。下手にロケットの打ち上げやUFOが出てきたり、技術的な説明がクドクドあるより、よっぽど「あ、なんか別の惑星に来ちゃった。帰れなさそう。どうすんの?」という現実感があったのが、振り返ると面白い。

お決まりだと、ボタンを実際に押してしまった建築技師と、巻き添えを食ったバイオリン弾きが、どっちが悪いとか諍いを起こすんだろうなと若干ゲンナリしつつ見ると、意表をついて二人とも争わず進む。ここもいいね。

で、そうこうしていると学芸会の工作みたいな飛行船が飛んできて、おいおいいくら何でもパチモンすぎんだろ!飛ばないよこんな形・・・なんて考えていると、人が下りてきて「クー」「クー」って言って謎の踊りを始める。
その「???」「なんでこいつらクーしか言わないんだ??」「人?宇宙人?」っていう疑問に上書きされて、宇宙船に対するツッコミがぶっ飛んでしまう。


この後もテンポよく「???」という予想もしないような訳の分からん展開が連続する。

連続するんだけど、だんだん「あー、あれってそういうことだったわけか!」って感じで、この惑星の一貫したルールというか作法が分かっていく。見ている我々もだんだんギンザザの文化に詳しくなっていくだ訳だ。

見始めたときはキチガイ映画かと思ったが、中盤でなるほどねとなり、終盤でそういう手があったかという形で話は終わる。

面白かった。


こっから完全にネタバレになるけど、この辺の解説が旨いというか、分かりやすい。

あと、この解説でも触れているけど、結構”人情物”なのよね。

終盤で、あーいろいろあったけど帰れそうやん!ってとこで突然、宇宙人(ウエフとビー)が裏切って、いろいろあって現地警察に捕まえさせることができたんだけど・・・死刑にならない代わりに保釈金を要求されんのよね。

主人公(マシコフとゲデバン)はそんな裏切り者ほっとけばいいのに、保釈金を稼ぐのに奔放したり、偶然あった地球に帰れる機会をフイにしてしまう。裏切ったウエフたちなんか放っておけばいいんだけど、でも助けてもらった義理もあるしという訳だ。

無事?保釈してもらったウエフたちはマシコフ達を連れて宇宙に出るのだが・・・なぜか地球ではなく、ビーの故郷の星に着いてしまう。そこで実はウエフから明かされたのは、裏切る前に地球へ行くルートを調べた際、宇宙船で地球に行こうとすると自分たちが植物にされてしまう星を通らないといけないので、地球には連れていけないことが分かったのだった…ということ。

それを知らされたマシコフ達は酸素マスクを捨てて、低酸素でのゆっくりとした死を選ぶ。ウエフ達は諦めずにこの星で楽しく暮らそうと必死に説得するんだけど、マシコフ達はもうガックリして生きる気力を失ってしまっている。
その姿を見て、ウエフ達は「それほどまで地球に帰りたいんだな・・・」と言い、乗れ!と言って・・・という話。

と、このように一見、金のことしか考えていないように見えた異星人のウエフ達と、地球に帰りたいだけのマシコフ達なんだけど、終盤はお互い相手のことを考えて色々決断するところが人情物かなーというわけ。

滅茶苦茶な設定なんだけど、「あ、あれってココに繋がんの!?」という風に、単にイカレ設定ではなく伏線になっていたりする。何度も見たい映画ではないが・・・名作ではあると思う。うん。

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