先日こういう投稿があった。
なのでこんな返信をした。
なんかもっと詳しい人が湧くかなと思ったけど、湧かなかった。
①モーターは回すと発電機になる勢
→ミニ四駆なんかのDCモーターはそうだけど、一般的な交流用モーターであるIM(誘導モータ)は単純に発電機にならない。なぜかって言うと、回転子が単純な「かご型導体」で出来ていて、磁石じゃないからだ。外からの電気で回すときは、固定子コイルからの誘導で誘導電流が流れて磁化されるから回る。だから、減速動作などで電力を取り出すことはできるけど、今回のように停止状態からは発電できない。
一方で、この洗濯機は恐らくPMモーターだから停止から発電できる。PMモーターというのは、回転子が磁石になっているモーターのことで、ミニ四駆のモーターに近いわけだ。磁石が埋め込んであるか張り付けてあるかなどでIPMやSPMとか呼び方が分かれる。
ちなみに似たようなもので「DCブラシレスモータ」というのもある。この辺ややこしいが、構造的にはPMモータとDCブラシレスモータは近い構造である。違いは固定子への電流の流し方で、PMモータはなるべく正弦波に近づくように…つまり商用電源(コンセントの交流)をそのまま使いたいんだけど、PMモータには滑りが無いので回転速度に合わせて周波数をコントロールしないといけないので、仕方なく制御波形を作っている…するのに対し、DCブラシレスモータは、直流を回転に合わせてON/OFF…ブラシは回転子の回転にあわせて電流の方向を切り替えるパーツだが、それを無くして電気的にやるのがブラシレスなので…というような思想の違いがある。思想だけじゃなく、ON/OFFなのか、ゆっくり切り替わるのかで電流の流れ方が変わるので、細かいところもたぶん違う。
さてPMモーターのほうが性能が良いのだが、基本的に高価である。強力な磁石が必要になるし、意外なところでは組立が難しく、組み立て機が高価になるなどの要素がある。電源が入ってなくてもケーシングにくっつこうとするからな。また、IMの場合はコンセントから簡単な回路で回すことができるが、PMは必ずインバータが必要になる。
このため比較的低価格帯の洗濯機はいまだにIMだろうし、昔の洗濯機はみんなIMだった。IMだと速度を変えられないんだけど、機械的/電気的な工夫で反転や変速をしていたのだ。掃除機などで強中弱と切り替えたりできるものも、昔は電気的な工夫が施された誘導モーターを使用していた。いまもかな。
だから、「モーターは回してやれば電気が起こる」というのは、工作レベルではあたり前だが、実用的な工業分野においては当たり前のことでは無いのだ。
②動力回路と制御回路は別に決まっとろう勢
インバータに関して大きな勘違いをしていると思うんだよね。
インバータは一定の交流電源から、好きな周波数の交流を作ることができるデバイスである。
交流から交流を作るんで勘違いされがちだけど、基本的にコンバータ(AC→DC)・キャパシタ・インバータ(DC→AC)の3点セットでできている。
ややこしいことにマトリクスコンバータといって、キャパシタが無いタイプのインバータ(AC→AC)もあるけれど、99.9%は前述の通りこの3点セットのインバータである。
ここでキャパシタについてだけど、かなり大きい物が使われている。コンバータにも種類があって、ダイオードブリッジを持ちいたパッシブコンバータと、IGBTなんかの開閉素子を使用したアクティブコンバータがある。これもまた、基本的にはほぼ全部パッシブコンバータだと言ってもいいだろう。アクティブコンバータのほうがノイズや省エネ効率が有利だし、電源回生(モーターで発電した電気を送電系に戻す)ができるけれど、その分回路が高価だから殆ど採用されない。
パッシブコンバータの場合、正負に反転し続ける交流波形を、負になったときにひっくり返すだけだ。このため、コンバータの出力する直流は「直流」とは言ってもON/OFFが断続するデコボコの波形である。これを滑らかにするためのバッファーとしてキャパシタが設けられている。
まぁつまり、インバータは一回直流の100~140Vを作って、コンデンサにためて、そこからPMモーターを回す交流を作っている。
一方で、液晶の電源とか、制御コントローラの電源は3.3V~12Vくらいの直流で設計されている。これもAC100Vとから作らねばならない。
一般的にはスイッチング電源という方式で作る。スイッチング電源とは、AC100V→コンバータ→直流→インバータ→高周波交流→トランス→コンバータという、いっぺん直流に直してから交流にして直流を作る方式だ。
もっと簡単なのは、AC100V→トランス→コンバータという方式で、これをリニア電源という。十数年前まではこれが主流だった。なんでスイッチング電源みたいな面倒くさい方法が主流になったかというと、周波数が高い方がトランスが小さく作れるからだ。(どちらかというと、インバータが入ることで出力を加減できるようになって、低熱損省エネになる方が大きいのだが・・・)
・・・というわけで、制御回路もモーター回路も、一発目にコンバータが入っている。
昔はこのコンバータは動力用と制御用で別々に設ける設計だった。理由は2つあって、制御用のスイッチング電源がコンバータを含めてセットのパッケージとして売られていたり、モデル回路みたいのがあったから、コンバータ部分だけ共通みたいな設計は面倒だった。もう一つはスイッチング素子のサージ耐圧などのイレギュラーな電圧に対する耐性が低かった。下手に動力回路と共通にすると壊れるリスクが高かったわけだ。
なので、小さい家電でも制御用のコンバータと動力用のコンバータは別なのが当たり前だったのだが・・・最近バラすと共通っぽいのを見かける。
ドラム式洗濯機なら別々の設計にするであろうと思っていたのだけれども、今回この件があって、ドラム式洗濯機クラスの大きい装置でも共通にする時代になったのかな?と推定したわけだ。
③モーターを回すと回生うんぬん
厳密には回生しない。
いや、回生という言葉自体は間違っていないのだけれど、電気的な狭い世界で言うと、回生というのは電源回生のことに絞って言う。
電源回生というのは、モーターで発生した電気を電源側に戻してやることだ。回生じゃないけどソーラーパネルが発電した電気を売電するときに使うコンバータと同じ。
ただ、普通のインバータのコンバータはパッシブコンバータなので、電源回生はできない。もちろん、モーターは減速時に回生電力を生じるから、回生できない場合は熱として捨てる。この熱として捨てる装置を制動抵抗器と言い、この動作を発電ブレーキという。ちなみに制動抵抗器は単なるヒーターだ。
ここで言いたいのは回生って言葉の厳密な用法というより、モーターが回生したからと言って、電源回生を生じて電源側を経由して制御電源の回路を入れることは、まず考えにくいということだ。
とはいえ、PMモーターを外力で回したからって電源が入る構成ってのは、驚きである。何か問題が生じそうな気もするけど・・・思いつく限りは問題ない。そこも面白い。
ちなみに本当にコンバータ共通なのかな?と思って回路図を探したけれど、見つからなかった・・・ここに基盤が出品されているのをかろうじて見つけたけれど、これだけではちと分からない。(これ1枚だけなのかもわかんないし。)
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ちょっと荒くてわかんないけど、赤線のところが共通のコンバータで、緑のところがモーター用のインバータ、オレンジのところが制御電源用のインバータじゃないかな・・・。でもこのサイズなら制御系と動力系が別々でもおかしくないサイズのような気もするし、何とも言えんなぁ。
結局、なんで電源が入るんだろう?