こんなニュースが流れてきた。
特許取得のピアノシューズをアプリで無許可販売容疑 会社役員を逮捕
他人に特許権のあるピアノシューズを無断で販売して権利を侵害したとして、茨城県警は5日、神戸市須磨区の会社役員の男(61)を特許法違反容疑で逮捕し、発表した。容疑を否認しているという。
Yahoo!ニュース特許取得のピアノシューズをアプリで無許可販売容疑 会社役員を逮捕(朝日新聞デ...https://news.yahoo.co.jp/articles/9b285ed49e721b7a690630e9e833f7d05fb67d5f他人に特許権のあるピアノシューズを無断で販売して権利を侵害したとして、茨城県警は5日、神戸市須磨区の会社役員の男(61)を特許法違反容疑で逮捕し、発表した。容疑を否認しているという。 県警によ
私自身特許も取るし、知人も起業して特許や実登をとっていたりするのだけれども、知財というのは分かっていない部分もあり、ちょっと気になったので調べてみた。
日本の特許は検索システムが政府から提供されていて、誰でも無料で簡単に調べられる。
www.jpo.go.jp11 Pocketshttps://www.jpo.go.jp/support/startup/tokkyo_search.htmlhttps://www.jpo.go.jp/support/startup/tokkyo_search.html
「ピアノ シューズ」だと上手く引っかからない。
「ピアノ 靴」で検索すると色々出てくる。
本質的にピアノに関係して良そうな特許は下表の通りだ。
文献番号 | 公知日 | 発明の名称 | 出願人/権利人 |
特開2022-046943 | 2022/03/24 | ペダル操作用靴 | 株式会社アシックス |
特許5470498 | 2014/04/16 | ピアノ演奏用の靴 | 倉知 真由美 |
特開2007-298630 | 2007/11/15 | 鍵盤足演奏ハンマー | 渡部 大輔 |
特開平11-338462 | 1999/12/10 | ピアノのペダル | 株式会社河合楽器製作所 |
まず、特許は1件だけだ。残りは特開といって、特許を申請して公開されただけである。実際はこの後審査請求で審査を行い、特許として認められれば特許になる。
なので、審査請求の前段階として申請しているか、或いは他社に先に申請をされないように出している程度のもので、特許としての権利はまだ無い。
となると、今回問題となっているのは特許5470498とみてよいだろう。記事から「2014年」「女性」とあるから、公知日や権利人の名前とも整合している。
特許の内容についても、前述のシステムで閲覧することができる。
具体的に何が特許なのかは、請求項を見ればよい。今回でいえば請求項は6個あるようだ。
内容としては・・・ピアノ演奏用の靴で、ヒールの位置が本来の位置より前方にオフセットしている靴ということらしい。そのヒールを視点にしてシーソー状に運動するから、歩行用の靴としてはイマイチだろうけど、ペダルを操作する靴としては便利であるという。なるほどね。
単純に前にオフセットしているだけだと、既存の靴でも微妙に前にオフセットしているだろうから、どこからが新しいアイディアなのか線引きが難しんくなり、特許が取れないのだろう。このため具体的に、ヒール設地部の後端の位置が、全長の11.9%より前にオフセットされているものを、この特許範囲としているようだ。
ここで、特許の場合は新規性、つまり出願日より前に似たようなものが無かったかというのが争点となるのは有名なようだ。だから、例えば出願日より前にヒールが前にオフセットされたピアノシューズが公知になっていれば、この特許は後からでも無効にすることができる。
確かに、世界中の靴を探してみれば、ヒールが全長に対して前方にオフセットされた靴もあっただろう。このため、この靴の特許性なんて無いんじゃないかというヤフコメも散見される。
ところがだ、この特許は「ピアノシューズ」の特許なのだ。つまり、「ふつうの靴」でヒールが前にオフセットされたものがあっても、この特許とは被らない。
逆にいえばもし仮に、登山用の靴だとか、ペダル操作であっても自動車やドラムの操作用に、ヒールがオフセットされた靴を作ったとしても、少なくともこの特許には抵触しない。
んだったはず。このへん、特許と実用新案とかいろいろ権利があって、考え方が違うからややこしいんだよな・・・
だから、もし仮にヒールが前にオフセットされたピアノ靴が昔に公開されていたら、この特許は無効になる可能性はある。が、ピアノ靴なんて種類は多くないだろう。権利人も無いから作ったのだろうし。
そこで私が読んでいる本はコレ。これが一番わかりやすくて、読みやすい。
知財の本はいろいろあるんだけど、内容が・・・その・・・面倒くさい。
この本は事例、しかも面白い事例に絡めて解説してくれるから、すらすら読める。妻にもおすすめの一冊である。
ちなみに読んでいて、サラッと私が開発したものも出てきてビックリした。
肖像権の侵害だとか、著作権がどうだとか・・・あるとは知っているけれどふわっとした知財関係の知識が学べる。
が、あまり頭に残っていないな・・・