ツーバイフォー木工の基本3/ポケットホールジグ2

こんにちは。
本当は手短に紹介しようと思っていたのですが、いかに便利かわかってもらえないと誰も1万円もするジグなんて買わないだろうなぁ・・・と思って、つい熱くなっちゃいました。
今回は組み立てが楽ってところを書きます。


ポケットホールで組むと楽

ポケットホールを使うと、設計が楽になるだけではなく、組み立てが楽です。
例えば前述の例よりもっと簡単な日の字型の本棚で考えます。

日の字型の場合、分割はどっちでもいいですが①のほうで考えます。
(板の種類が少なくて済むほうが、材料の調達が楽ですから。)

普通のねじ止めで組み立てる場合でも、下図の通りネジを打てばいいので、簡単そうです。紙の上では。

ところが、実際に組み立ててみると、初心者には意外と難しいのです。

組み立て方は色々あると思いますが、とりあえず垂直板(緑)を床に置いて、水平な板(青)をその上に立て、ねじ止めするのが簡単そうです。

でも、実際にやろうとすると床の中からネジを回さないといけないので、これはできません。

そうすると、一般的には上下ひっくり返してやるわけです。
つまり、水平な板(青)を立てて、その上に垂直板(緑)を置いてねじ止めすることになります。でも、ねじ止めの最中は固定されていないので、上から強く押すことに集中すると、青い板が倒れちゃいます。

これを固定なしでやるのは、青い板の厚みや長さにもよりますが、結構難しいのです。

ネジを打ち込む際には、ネジを工具で強く押し付けなくてはいけません。これはネジの長さや太さによりますが、相当に強力に押さないと、工具が空回りしてネジをナメて(+のネジ山が削れて〇になる)しまいます。

また、普通のネジ留めだと、緑の板厚によっては随分長いネジが必要です。緑の板を貫通しつつ、青い板に食い込む必要があるので、材が2×4材だったりすると、51mmや65mmといったネジになります。これを最後まで打ち込もうと思うと、自分の場合は体重をかけて押し付けるレベルです。

上図を固定されていない状態で体重をかけて回すというのが、“結構難しい”ということはご想像頂けるでしょうか。

尤も、解決策は色々あって
・ある程度短い/小さいなら、気合でバランスを取って打ち込む。
・垂直な板の両側に重いものを置いて倒れにくくする。
・コーナークランプというクランプで固定する
・横倒しにして壁に押し付ける形で打ち込む

等があります。一番手軽なのは壁に押し付けですが・・・
1×4の場合等ネジが十分に短ければ、押し付けに必要な力が少ないので、これが簡単です。しかし、2×4の場合など、ネジが長い場合だと押すのに必要な力が強くて、想像以上に難しいです。

コーナークランプがスマートな解決策っぽいですが、実はあまり良い道具ではありません。一個千円程度の安物は持っていますが、自立するほど強固には固定できません。モノによっては30mmくらいしか咥えられないので、2×2や2×4に使えなかったりします。しっかりしたものは一万円近くするので、なかなか手が出せずです。

とはいえ、いろいろ工夫のやりようはあります。予め下穴をあけておき、押し付ける力を減らすとか、ネジをちょっと飛び出すくらいまで予め締めておいて、叩いてとっかかりを打ち込むとか。誰かに手伝ってもらうとか。

なんとか工夫して両端の板は止めたとするでしょう。
ところが問題はほかにもあります。

この中間の板のように、ネジを打つ側から見えない板を狙うのがまた難しいのです。板かネジがちょっとズレてしまったり、ネジが節や木目で少し曲がったりして、板の表に出てきてしまう事故が少なからず起こります。

この通り、意外とネジを打ち込むのも大変なのです。

小さい物ならソコまで大ごとではないのですが、家具が大きくなるほど支持固定や段取り替えが大掛かりになってしまいます。(倒れて”ドカン”となったときの妻からの視線も冷たくなります。)

DIYに慣れている人なら、
①しっかり測って線を引き
②事前に念入りに下穴を空けて
③様々な固定道具を使って固定して
④必要に応じて仮道具(仮ジグ)を作る
などの工夫をしています。

ネジを打つ前にしっかりと段取りをして組み立てるので、奇麗に仕上がるわけです。一般に木工というのは、こういう見えない工数が一杯あるんです。

でも、①~④の道具をしっかり揃えるなら4~5万円は考えたほうが良いくらい、いろんな道具が必要です。また、しっかり真っすぐネジを打つっていうのも経験が必要です。

でも、ポケットホールなら難しいことを考えず、次のように打てばいいのです。

やってみるとわかりますが、ネジと逆向きに打てる・・・要は留める相手の材を貫通させないというのが非常に楽なのです。

ポケットホールで組むと綺麗に組みやすい

ポケットホールのネジは半ネジ

ポケットホールは専用のネジを使います。

このネジの特徴は、頭の溝が+ではなく、□で押し付けなくてもナメないってこともありますが、重要なのは丁度いい”半ネジ”ということです。

半ネジというのは、ネジの全長に対してネジ山が無い部分が多いという意味です。ポケットホール専用ネジは1/3くらいネジ山が無い半ネジです。

これにより、締め込んでいくと途中で貫通材を相手材に押し付ける効果が生まれて、締め付け途中に多少材が離れてしまっても、引き締められて隙間が無くなります。

この半ネジによる引き締めは重要です。隙間が開かずに見た目が綺麗に仕上がるというのも利点なのですが、強度が格段に増します

強固に引き寄せられて繋がっている接合部分は、材料同士に押し付け力が生じており、これによって摩擦が生じています。このため、荷重がかかった時、荷重の一部を摩擦が負担してくれて、ネジのせん断力が減ります。

一般にネジというものは、せん断(切断するような力)に比べて、引っ張りの強度は格段に高いのです。

車のホイールなんかも、垂直方向の力は100%をネジのせん断で受けているのではなくて、ハブとホイールの摩擦で受けています。だから、緩むと100%がネジに掛かって、折れやすくなるわけです。

また、剛性的にも僅かでも隙間があると不利です。
剛性、つまりカッチリしてる感です。

隙間があるとネジを曲げる力が掛けやすくなるので、同じ荷重でもネジが大きく曲がります。図ほど隙間が大きくない場合にも、ごく僅かに曲がってしまいます。

このごく僅かな曲がりによって、出来上がった作品が微小に変形し、「ガタガタする」などのチープ感を生んでしまうわけです。

接合部の剛性が低いと、作品が僅かに変形して、ガタガタする

もちろん、繰り返し曲げが加わったら折れますし、せん断力を谷のあるネジ山部分で受けるなど、強度的に不利でもあります。

だから、木工では半ネジで引き締めて組み立てるのは重要なんです。

(このため、私が小さい頃の木工だと、ネジ組のときはボンドを使うように奨められました。)

普通のネジでも半ネジで組めるが・・・

ところで、普通の木ねじでねじ止めするときも、ちょうどいい長さの半ネジを使えば同じ効果が得られます。従って、前述の半ネジ効果はポケットホールの専売特許という訳ではありません。

でも、一般に流通しているネジの長さと半ネジ部分の組み合わせはある程度限られていて、普通のネジ締めで丁度いい半ネジっていうのがありません。

例えばmonotaroの例で見てみましょう。
表で寸法を見てもピンとこないので、図にします。

半ネジの全ラインナップを図で表記しました。赤い部分がネジ部分です。
そして、赤くないところがネジがない部分。ここが凡そ片方の材の板厚となればよい訳です。

ちなみに、相手側の材へ食い込む長さは20mm以上が木工の目安です。
例えば1x□材の場合は厚さ19mmですから、食い込み+20mmを加えて39mm以上のネジを使えばまず間違いないでしょう。

そうすると、AC-41半~AC-51半あたりを使えば、ポケットホール工法と同等の引き締め効果が狙えます。
従って、貫通する側の厚みが20mm以下なら、ポケットホールを使わなくても半ネジ効果は簡単に得られます。

一方で困ったのが2x□材の場合です。貫通させる材が厚み38mmですから、食い込み+20mmを加えて58mm以上のネジを使えばいいのですが・・・AC-100を使っても、貫通材のほうに相当ネジ部分が残り、引き締め効果が怪しいです。

仮にAC-90を使ったとして、42mmもネジを相手材に打ち込まねばならず、相手材が薄かったりするとかなり難しいです。
尤も、解決方法はいろいろあって、私がお勧めなのは材料を彫り込んでしまうことです。

上図にの最下段の例の通り、太いドリルで穴を20mmほど掘って、板厚が19mmと同等になるようにしてしまえば、1x□と同じように打てます。

ホームセンターなどの什器を2×4で組んである例を調べたところ、この方法で留めてあるものが多かったです。

でも2x□に打つならいいですが、4x□・・・例えば1×4や2×4を並べて□を作るときなんかはどうします?

1×4を並べて扉を作った例

物凄い量を掘り進まなくてはいけません。
AC-41で64mm、AC-90を使うとしても50mmくらい掘らないといけません。


このとおりグダグダと半ネジ効果を得る利点や制約、工夫について述べましたが・・・ポケットホールの場合は何も考える必要はありません。

要は半ネジが効くような位置に、仮想的な板厚が来るよう、ジグで穴深さと端面からの距離を調整してくれます。従って、板厚に合わせてジグを調整すれば適切に半ネジが効くわけです。

まとめ

というわけで、ちゃんと段取りを整えて、しかるべき手順を踏んで組み立てれば、ポケットホールが無くても綺麗に組み立てできます。

しかし、だれでも最初は素人ですし、私のように面倒くさがりな方もいるはずです。そういう人には、ポケットホールのほうが失敗が少なく、楽なのです。

おしまい

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