憧れとやっかみ

今日は朝から都内に電車で出張だったんだけど、早く帰ってきたから、直帰しないで会社に向かう。
ルート上に自宅があるので、自宅に寄ってZ4で出勤する。当然オープンである。

朝の時間帯も良いものだけど、まだ日は出ているが日暮れ手前の時間帯というのもなかなか良い。風が気持ちいい時間帯だった。
朝に比べて車の少ない街をスムーズに走って、ふと歩道に目をやると、小学生の集団がこっちを見ていた。

工場に乗りつけて従業員駐車場に停める。
ふと、オープンカーに乗るにあたって、あまり人からどう見られるかは考えていなかったが、日中にのんびり出勤する姿を工場の人に見られてて、どう思われているだろうかと思った。

アウディR8

というのも、もう15年前になるか・・・私が新卒で入社した会社にDさんという、当時30代前半の先輩がいた。
Dさんは温厚な性格で、いかにも裕福と言った外見だった。
ブラックなオフィスに似合わず、丁寧で育ちの良さを感じる言葉端だった。

そんなDさんには、取り立てて目立った特徴は無かったのだが、通勤車がアウディR8だという意外な隠し玉があった。

アウディR8というのは、アウディのスポーツカーの一つである。
車に詳しくない人でも、「あ、スポーツカーかな?」というような車なんだけど、一方で車に詳しくない人はアウディTTクーペと見分けがつかないような、何とも言えない車だった。

実際にはWikiPediaでも参照してもらえばいいが、エンジンはV8 4.2L 420馬力という本格スポーツカー。
※アウディTTクーペは1.8L 400万円前後と、我々庶民が考える普通のスポーツカー

アウディは大衆車メーカーなのだが、S/RSシリーズは特別で、更に別格のRシリーズがある。もはや別メーカーというくらいラインナップが異なる。その中でも一番高いやつがR8である。

アウディR8は2シーターの専用フレーム、エンジンも後ろ(後部座席があるべき位置)だし、高いスポーツカーというより、安価なスーパーカーと言ったほうが良い。
RX-7とかランエボ、BMW M3とかといったスポーツカーより、ランボルギーニやフェラーリに近いという訳だ。

いま“安い”スーパーカーと言ったが、スーパーカーとしては安い方だが、スポーツカーとしてはけた違いに高い。
値段も当時1,700万円だったから、今で言うと2,500万円くらいの車だと思う。

どのくらい凄いのか上手く伝わらないけど、カーセンサーで中古を見てもらえば軒並み2200万円より~というプライスから、これで通勤するってどれだけ凄いか分かってもらえると思う。

R8は憧れの的ではなかった

そんなDさんは車外交で仕事をバリバリ優位に進めて・・・
いなかった、めっちゃ馬鹿にされていた。

本人は知ってか知らずか、自分からR8のことを喋ったりしなかった。
R8を自慢するどころか、もはや隠していると言っても良かった。
車に対するうんちくを語ったりもしなかったし、車のことで嫌われるようなことは一切していなかった。

なのになんであんなに馬鹿にされていたのか・・・。

理由は実家に買ってもらったという話だったからだと聞いた。
Dさんは実家が裕福で、更に嫁婿で嫁さんの家も裕福だった。金持ち×金持ちだった。
本人から聞いたわけではないので真偽は不明だが、R8は嫁さんの実家からのプレゼントだという噂であった。

本人の実力で買ったんじゃないからって馬鹿にしていた・・・という理屈だ。

でも、実際のところは妬み200%だと思う。
だって実家の力うんぬん言ったらみんな平等じゃないわけだし、当時のバリバリ昭和生まれだった先輩方は、1台目を車を親に買ってもらったり、金出してもらった人も絶対にいっぱいいた。と思う。

1台目からバイト代で買った自分から言わしてもらえば、R8だろうがポンコツの軽だろうが、親に車を買ってもらえるなんてボンボンである。

んで親に買ってもらった車を見せびらかしていたりしていたわけではない。
きっと自慢したくなるような凄い車だけど、そこはグッと抑えて隠していた。
(私が入社する前には見せびらかしていた可能性はあるけど・・・)
後ろ指刺されるようなことはしていなかった。

平凡と非凡

まぁ、でも彼は仕事も堅実だけど目立ったところが無く、言われたことはある程度しっかりこなせるけど、びっくりするほど早いわけでもなかった。
なんか凄い技術があるとか知識があるってことも無く、言い方は悪いが優秀な雑用って感じだった。

R8には載せてもらえず、私はその職場を後にしてしまったので分からないけど、彼の運転はたぶんR8とは思えない優雅でのんびりした運転だろうな・・というのは予想が付く。

そんな平凡なところと、非凡な車がうまく合わずに、彼にはすごくネガティブなイメージが付いて回ったのかなぁと。
周りの集合意識が「俺と大して変わらない、下手をすると俺以下のやつに、凄い一面があるのが気に食わない」→凄い一面が実は違うというのを裏付ける理屈が欲しかった。みたいな。あさましい限りである。

例えば同じ二千万円でも、結婚祝いに自宅を買ってもらった、建ててもらったとかならここまで馬鹿にされなかっただろうにと思う。二千万円という家は平凡+α程度だからだ。

逆に或いは他の人より首一つ抜けて活躍していたら、凄いやつが凄い車に乗っていると羨望を集めたかもしれない。

まぁ長々と言ってあれだけど、「身の丈に合わないアイテムを身に着けると、自分を下げる場合もありうる」ということだ。

自分はどうだろうか・・・

ふと、Z4は自分の身の丈にあっているのだろうか?という気もした。
確かに車両自体は大した価格じゃない。新車はともかく、中古価格なら、私の身の丈が如何ほどかは分からないが、まぁ分不相応な値段の乗り物ではないだろう。新車の軽自動車より安いくらいだし。

とはいえまぁ、車体そのものより、周りにお金が掛かる。税金・タイヤ・ガソリン・幌やらなんやら・・・ついでに言うと荷物も運べないから、別にもう一台車が要る。長い目で見ると、新車の軽の何倍も金が掛かる。

そう考えると結構ぜいたくであり・・・身の丈にというのは怪しくなって来なくもない。
たぶん、車に詳しくない人もこの金のかかり具合って、なんとなーく察しているのではないかと思う。

なのでちょっと平凡じゃない乗り物に乗っていると思われていてもおかしくは無いし、その感覚は正しいと思う。

私も馬鹿にされないような成果を挙げなくては・・・と思う。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする